今月の名曲昭和アニソン10選【2018年11月版】

06.コスモス・ドリーム~宇宙をかける夢~
「新竹取物語1000年女王」OP

放送年 – 1981年~1982年
作詞 – 阿木燿子 / 作曲 – 宇崎竜童 / 編曲 – 船山基紀
歌 – 高梨雅樹

スラップベースが熱い、ほんのり山口百恵感溢れる名曲

松本零士原作『新竹取物語 1000年女王』のオープニングテーマです。
以前から大好きな曲なのですが、久々に聴きたくなり最近何度も聴いていた曲でした。松本零士の作品の中ではあまり話題にあがってこない作品ですが、主題歌は他の松本作品同様、名曲となっております。

「コスモス・ドリーム~宇宙をかける夢~」をはじめて聴いたとき、これは完全に山口百恵やんと思った覚えがあります。そして今これを読んでくださっている方の中にも同じ印象を持たれた方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。それもそのはず、この曲の作詞・作曲を担当されたのは「プレイバックPART2」をはじめとする山口百恵の楽曲を手がけた阿木燿子・宇崎竜童夫妻。宇崎竜童の曲は常に山口百恵感があるわけではないのですが、この曲は山口百恵が歌えば違和感なくそのまま山口百恵の曲になるだろうなと思うほど山口百恵感溢れる曲になっています。特にサビの手前が非常に「プレイバックPART2」で、そのまま“馬鹿にしないでよ”と続けても、曲を知らない人は曲が変わったことに気付かないのではないでしょうか。
まあ、そんな感じで限りなく山口百恵テイスト溢れる曲ではあるのですが、曲としてはとても完成度の高い名曲になっていると思います。
この曲は男性ボーカルの曲ですが、ヒロインである雪野弥生(1000年女王)の視点で描かれた女性目線の歌詞になっています。語尾が丁寧語で終わるところにとても女性や母性を感じさせますね。ボーカルの高梨雅樹さんはこの曲でデビューだったようですが、新人であることを感じさせない懐の広い朗々とした歌いっぷりが、男性であるにも関わらずこの曲の持つ母性性を増幅させているように思います。
編曲は沢田研二の「勝手にしやがれ」や少年隊の「仮面舞踏会」、アニソンなら「宇宙空母・ブルーノア-大いなる海へ-」を編曲した船山基紀先生。船山先生の編曲はいつも豪華なのですが、この曲も松本零士の描く壮大なSFに似合う優雅でスケールの大きさを感じさせるアレンジがなされていて素晴らしい! 楽器の使い方も全般的にとてもきれいです。特にスラップベースが激熱なのでぜひ耳を澄まして聴いてみてください。
ただこのアニメ、私は見たことがないのですが、巷の噂ではこの曲のような盛り上がった印象はあまりなく、ヒロインの雪野弥生がラーメン屋でバイトしてたシーンしか覚えてない……くらいの印象の人が多いようです。う~ん……。

07.星の王子さま プチ・プランス
「星の王子さま プチ・プランス」OP

放送年 – 1977年
作詞 – 阿久悠 / 作曲 – 三木たかし / 編曲 – 長戸大幸
歌 – 鈴木賢三郎

祝・CD化! 涙腺をツンと刺激するOP

『星の王子さま プチ・プランス』のオープニングテーマです。
以前、この曲の耳コピ伴奏を作ったので、nanaで私をフォローしてくださってる方にとってはお馴染みの曲ですね。えっ、知らない? 聴き返してきて!
nanaで打ち込んだアニソンの中で一番好きかもしれないと思うほど好きな曲です。しかし長らくCD化されていなかった不遇の曲だったのですが、なんとこの度遂にCD化が決定したとか! めでたいぞ~! 祭りじゃ~~! ということで、浮かれて最近またよく聴いていました。

『星の王子さま プチ・プランス』はかの有名なナック制作のアニメです。といっても、某『チャージマン研!』のようなむちゃくちゃさはなく、原作の雰囲気に沿った真っ当なアニメだったようです。
しかし、ナック制作のアニメの主題歌はどうにもCD化に不遇で、この曲も阿久悠先生作詞三木たかし先生作曲という豪華布陣の作にも関わらず長らく日の目を見ることができない曲でした。まあこの曲に関してはCD化が難しかった理由はマイナー作品である理由以外に、原作者が外国人なので著作権絡みでストップがかかっていた可能性が高いのではと思っています(以前も一度阿久悠のコンピレーションアルバムでCD化が予定されていたが最終的に選曲から外れたこともありましたし……)。なにはともあれ今回は無事に収録されそうでよかったです。直前でCDから外されたら泣く!
本曲は全体的に涙なしでは聴けないほど美しい曲ですが、その中でも特にイントロがとてもきれいな曲です。ストリングスとグロッケンシュピール(鉄琴の仲間)、そしてコーラスの旋律が鳥肌が立つほど美しい! そのあとから入ってくるチェンバロのクラシカルな音色もなんとも泣かせます。当時中学1年生だったというボーカルの鈴木賢三郎くんの純粋な歌声にも胸がきゅんとしますね。
それから今回のCD化は阿久悠先生が手掛けた子供向けの楽曲を集めたアルバムということでやはり歌詞にも触れておきたいところ。「星の王子さま プチ・プランス」の歌詞は「大切なものは目に見えない」というテーマが盛り込まれており、「星の王子さま」の世界観とリンクした歌詞になっています。巷では説教臭いと言われる原作ですが、この歌詞は押しつけがましさや説教臭さはなく、いたってシンプルな歌詞になっているので、すっと心に入り込んできて、まるで自分が純粋な存在であるような気分にさせてくれますね。さすが阿久悠先生、素晴らしいお仕事です。

08.バリドリーンの歌
「秘密戦隊ゴレンジャー」挿入歌

放送年 – 1975年~1977年
作詞 – 上原正三 / 作曲・編曲 – 渡辺宙明
歌 – ささきいさお、こおろぎ’73

中毒性が高いゴレンジャー挿入歌

『秘密戦隊ゴレンジャー』の挿入歌です。
バリドリーンとは第42話で失われたバリブルーンにかわる空中要塞のこと。この曲はそんなバリドリーンのテーマソングにあたるのですが、名曲が多いゴレンジャーの挿入歌の中でも特に中毒性の高い曲になっています。

この曲はなんといってもバリバリバリバリバリドリーン”というフレーズに尽きるでしょう。このフレーズを一度聴いてしまったが最後。延々と頭の中をループし続けるという恐ろしいフレーズになっています。宙明先生の曲の中ではどちらかというとメロディがベタでダサい方の曲になっているのですが、ベタなメロディとベタな歌詞だからこそこの中毒性がすごい! それに、メロディの運びも階段状に横へ横へ伸ばしていくというメロディの基本に沿った作りになっており、子供向けの曲のあるべき姿のように思います。
でもさすがは宙明先生、音楽的な聴きどころもしっかり押さえています。ギターのスクラッチでリズムを刻んでいるアレンジはめっちゃカッコいいですね。それから間奏のアナログシンセのソロのなんとも言えないまぬけなさも心を鷲掴みにされます
「バリドリーンの歌」はささきいさおとこおろぎ’73がユニゾンで歌っているところが多いのでささきいさおがメインという印象の弱い曲ですが、最後の“飛んでゆく”というところだけささきいさおがソロで歌うんですね。この声がとても渋くて、毎回少しドキッとします。ささきいさおの声のおいしさを改めて実感できる曲なので、ぜひささきいさおの声にも注目して聴いていただきたい!

09.みんな達者でね
「おじゃまんが山田くん」ED

放送年 – 1980年~1982年
作詞 – 望田市郎 / 作曲・編曲 – 川口真
歌 – 三橋美智也

あのCMを彷彿とさせる心がほっとするED

『おじゃまんが山田くん』のエンディングテーマです。
『おじゃまんが山田くん』はあまり話題に上がるタイトルではないですが、地味に楽曲に恵まれた作品です。その中でもこの山田くん最後のEDとなる「みんな達者でね」は山田くんの楽曲の中でも特にお気に入りの1曲です。先日、ふと聴きたくなり再生してみたら改めていい曲だなあと感じたのでしばらく何度も聴いていました。

歌うは演歌歌手の三橋美智也さん。
山田くんの主題歌は山本正之が作った前期の楽曲も人情味に溢れた楽曲でとてもいいのですが、個人的には三橋美智也が歌った後期のOPEDの方がより好きだったりします。三橋美智也の牧歌的な声が独特のまったりのんびり感や郷愁感を醸し出していていいんですよねえ。
ところでこの声、三橋美智也という歌手を知らない方でもどこかで聴いたことあるんじゃないでしょうか。実は三橋美智也はカールのコマーシャルソング「いいもんだな故郷は」を歌っている方なんですね。さらに「みんな達者でね」は作編曲も「いいもんだな故郷は」を作った川口真さんが担当されているので楽曲全体のカール臭がすごい! 「いいもんだな故郷は」の初レコーディングは78年だそうなので、こちらの方が後出です。ということは、カールの曲を聴いたプロデューサーがこういうの主題歌にしたいよね、と言ってパロディくらいのつもりで三橋美智也と川口真を起用したのかもしれませんね。もしくはスポンサーのひとつが明治製菓だったようなので、その繋がりで被せたのかもしれません。
しかし、この曲はこの曲でいい曲には変わりないと思います。
この曲は歌詞の力もとても強い曲です。田舎を出た者が都会での出会いと別れを俯瞰的にみている歌詞なわけですが、どうですか、こののんびりとしながらも一抹のさみしさを感じさせる歌詞! 心にツンときませんか? 特に“ホイヨー”がとても郷愁感を演出していて、この曲にいい味を与えているように思います。そして最後の“達者でね 達者でね みんな達者でね”という歌詞が自分にも呼びかけられているような気がしてなんとも心があったかくなりますね。
田舎生まれの人もそうじゃない人も、なんだかふるさとが恋しくなる曲ではないでしょうか。

10.誰がために
「サイボーグ009」OP

放送年 – 1979年~1980年
作詞 – 石ノ森章太郎 / 作曲 – 平尾昌晃 / 編曲 – すぎやまこういち
歌 – 成田賢、こおろぎ’73

追悼・成田賢

1979年版の『サイボーグ009』のオープニングテーマです。
11月13日の朝、ツイッターを何気なく見ていると衝撃的なニュースが飛び込んできました。それは、この「誰がために」を歌った成田賢の訃報でした。
成田賢はバイク事故の後遺症により一時は表舞台を遠ざかっていましたが、近年、歌手活動を再開、亡くなる直前まで精力的に音楽活動をされていました。そんな成田さんの代表曲「誰がために」をいま一度聴いてみたのですが、やはり今聴いてもまったく色褪せない名曲でした。

「誰がために」は009たちの悲哀を見事に表現した1曲です。聴けばサイボーグへと姿を変えられ、人でも機械でもない存在となったキャラクターたちの悲痛な想いがひしひしと感じられるのですからすごい曲です。
平尾先生による力強いメロディも、すぎやまこういち先生によるオーケストレーションも隙がなく、『サイボーグ009』の原作者である石ノ森章太郎先生自身による作詞も素晴らしくカッコいい。特に、サビが終わったあとの荒野を吹きすさぶ風を表現したようなフルートの旋律がとても美しく、それでいて寂しさが伝わってきて好きです。それから、“夢見て走る死の荒野”の裏で鳴っているすぎやま先生お得意のハープも曲を盛り上げるため効果的に使われていてたまりません。こおろぎ’73による男臭いコーラスもこの曲の勇ましさの一端を担っています。
そして、成田賢の少ししゃがれ気味のボーカル。「誰がために」という曲は、男臭く、しかしどこか哀愁を感じさせる成田賢の歌声だったからこそ名曲をさらなる名曲へと昇華させたのだと思います。文句なしにカッコいい声です。
成田さんは生涯現役を掲げていたといいます。その通り、本当に亡くなる直前まで歌い続けていました。私が言うまでもなくその姿はまさしくプロでした。
ご冥福をお祈り申し上げます。

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