萌え系悪役ソングの決定版「ナゾーの歌」黄金バット(1967)

こんにちわ、昭和アニソンオタクDTMerのはなちゃんです。
主に「nana」という音楽アプリで耳コピDTM伴奏を投稿したり、「YouTube」にオリジナル曲を投稿したりしています。
とりあえずnanaにあげた伴奏は日を置かずこちらにも記事を書くというルールで自分を縛ることにしたので、「はじめ人間ギャートルズ」に続く3回目は、『黄金バット』の愛すべき悪役、ナゾー様のテーマ「ナゾーの歌」です。
何気に60年代の曲を打ち込むのははじめてでした。
ぜひ、原曲及び、私の打ち込み伴奏を再生しながら記事を読んでください!

ナゾーの歌

放送年 – 1967年~1968年
作詞 – 第一動画 / 作曲 – 宇野正寛
歌 – ボーカル・ショップ セリフ – 島宇志夫


『黄金バット』の原作は、昭和初期に出回っていた紙芝居だ。主人公・黄金バットは金色の髑髏の頭に漆黒のマントを纏い、高らかに笑い登場するという主人公らしからぬ出で立ちではあるが、当時の子供たちに人気はあったそうだ。ちなみに『黄金バット』の紙芝居は戦時下の混乱により散逸、または焼失しており、現品はほとんど残っていないらしい。
ナゾーはそんな『黄金バット』の敵役として登場するキャラクターだ。四つ目のミミズクの覆面を被り、左手は機械の鉤爪、下半身は円盤の中という出で立ちで、宇宙征服を目論んでいる。ただし、アニメでは一度も黄金バットに勝ったことはなく、宇宙征服への道は遠いようだ。

そんなナゾーにはテーマソングが存在する。それがこの「ナゾーの歌」だ。この曲は劇中で使われたことはなく、当時はソノシートでのみ発売されている。
音楽としては取り立ててテクニカルな曲ではないのだが、やたら勢いに溢れており、一度聴くと忘れられないインパクトの強い曲になっている。そして同時に、ナゾーに萌える曲になっているように思う。

ここからは(半ば無理矢理)3つの項目に分けて「ナゾーの歌」を解説していこう。

鳴り響くヴィブラスラップ

「ナゾーの歌」は正直あまりアレンジに触れるところが少ない曲だ。ベースをはじめとした楽器がメロディとユニゾンをしている箇所が多いなど、素人くさいアレンジが目立つ曲なのだが、その中でひとつ気になる音と言えば冒頭から曲終わりまで何度も鳴っている“カーッ”という音だろう。
北島三郎の「与作」や『水戸黄門』のOP「あゝ人生に涙あり」をはじめとした演歌でよく聴くこの音はヴィブラスラップという打楽器の音だ。L字形に折り曲げられた太い針金の片方には木製の箱、もう片方には木製の球体が付いているこの楽器は、日本では演歌でよく使われる楽器なため和風なイメージを持ちがちだが、元々はラテンアメリカのパーカッション楽器である。

ヴィブラスラップという楽器は、キハーダというロバや馬の顎の骨を使った楽器の代用楽器である。キハーダが高価なためかわりにかわりとなるヴィブラスラップが作られたというわけだ。
どちらの楽器も音はほぼほぼ同じなため、特に曲の中で鳴っているとどちらがどちらの楽器なのから判断はほぼ不可能だ。なので、「ナゾーの歌」で鳴っているのも正直どちらの楽器なのかはわからないが、この曲はそれほど予算がかけられているように思えないから、恐らく手軽に手に入るヴィブラスラップの方が使われているのではないだろうか。ちなみに前述した「与作」はヴィブラスラップではなくキハーダが使われている。

ヴィブラスラップはここぞというときに一発鳴らすようなアクセントとしての使われ方をすることが多いのだが、「ナゾーの歌」では惜しみなく連発されている。この連発するヴィブラスラップの音が曲に迫力を与えているように思うが、どうにも同時におもしろさも出てしまっているように思う。
さらに木琴というコミカルさを出すのにうってつけな楽器が同時に鳴っているため、どうもこの曲を聴くと両手を上げて円盤に乗り黄金バットを追いかけるコミカルなナゾーが頭に浮かび、ナゾーがかわいく思えてしまう。そう思うのは私だけではないと思うのだがいかがだろうか。

ナゾーが憎めない子供っぽい歌詞

「ナゾーの歌」の歌詞はいかにも子供向けだ。作詞が第一動画となっているから、アニメの制作スタッフの誰かが書いたのだろう。音楽同様、特に巧みな表現が使われている歌詞ではないが、このなんとも言えないチープさがまたこの曲に独特の雰囲気を与えている。

ナゾーの一人称で進んでいく歌詞は、自分がいかにすごいやつかを語る。その語り方というのが“おれには こわいものはない”など、まるで子供が強がっているような物言いでまったく怖さはない。むしろ微笑ましくなる。
そもそも出だしが“エイエイエイエイ”だ。とんでもなく頭の悪そうな掛け声はまさに萌え系のそれだ。自ら悪であることを自覚し、自称しているところもおつむの弱さを感じる。

そんな微笑ましい歌詞を歌い上げるのは、5人の男性メンバーで構成されるボーカル・ショップなわけだが、このボーカル・ショップの低音のきいた歌声とナゾーのセリフだけは悪役感が満載だ。さらに間奏の黄金バットの笑い声も悪役らしく、この曲の悪役感はぎりぎりこの歌声とセリフで保たれているように思う。

ちなみに、この「ナゾーの歌」フル版は3番まであるのだが、2コーラスのみの音源も出回っている。2コーラス版では1番と3番の歌詞が採用されている。
60年代のアニソンはこういう風に2パターンある場合が多いのだが、アニソン収集家にとってややこしいのでどちらかに統一してもらいたいものである。

ローンブローゾーの謎

ところでこの曲でも何度か出てくる“ローンブローゾー”というセリフはなんなのだろうか。これはアニメ本編中もナゾーが度々口にする言葉だが特に必殺技の名前などではない。ただの口癖だ。世のお兄さんを魅了し続ける少女アニメ『カードキャプターさくら』の主人公、木之本桜の口癖“はにゃーん”のようなものだ。
正直、このセリフに触れることは曲の解説の枠を越えているのだが、ナゾーと言えばこのセリフに触れておかなければいけない気がするので最後に触れておこうと思う。

“ローンブローゾー”の由来としては、イタリアの精神学者・チェーザレ・ロンブローゾからきているだろうという説が有力なようだ。ロンブローゾは犯罪人類学の創始者で、犯罪者には一定の身体的・精神的特徴があるという説を唱えた人だ。
しかし何故、そんな精神学者の名前をナゾーの口癖にしたのだろうか。
調べてみるとふたつあるようだ。説は以下。

①紙芝居時代に紙芝居のおじさんがアドリブで言い出したという説
②ナゾーの本名が「ローンブロゾ・ナゾー」であるという説

どちらの説もそれっぽいが、いかんせん古い作品な上、原作はほぼ現物がない紙芝居なため決め手にはかける。しかもアニメ版ではナゾーは「エーリッヒ・ナゾー」と名乗っている。
他に、チェーザレ・ロンブローゾが唱えた犯罪者には頭部の形に特徴があるという説と、ナゾーの頭部が歪な形をしていることをかけての口癖ではないかという考察をする人もいるようだ。

まあなにが正解かは分からないが、うれしいときもかなしいときも、さらに自分のテーマソングにまで“ローンブローゾー”と叫ぶナゾーは実に愛らしい萌え系のキャラクターではないだろうか。
さあ、最後にみんなで叫ぼう。

「ローンブローゾー!」

あとがき

いかがでしたでしょうか。「ナゾーの歌」のかわいさが伝わりましたでしょうか。「ナゾーの歌」がしばらく頭の中をぐるぐる回りだしたら幸いです。
「ナゾーの歌」以外にもヴィブラスラップを使ったアニソンはたくさんあるので、今度その辺の曲もまとめた記事も書きたいですね。

それではまた次回お会いしましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です