昭和アニメの劇中アイドルソング10選

06.ときめきセブンティーン
「剛Q超児イッキマン」挿入歌

放送年 – 1986年
作詞 – 竜真知子 / 作曲 – 国安わたる / 編曲 – 林有三
歌 – 秋本理央

謎のセブンティーンという年齢

西暦2062年という未来が舞台の『剛Q超児イッキマン』にもアイドルがいた。主人公、一気の幼馴染として登場するのがそのアイドル・桃江星子。一気が星子に告白をするも、すでにスーパースターだった星子は一気につれず。そんな星子の気を引くため、新たな形の野球、バトルボールで有名になろう! というのが『剛Q超児イッキマン』のストーリーだ。
桃江星子の声優と歌を務めたのは、当時売り出し中だったアイドル・秋本理央。OVA『幻夢戦記レダ』の主題歌「風とブーケのセレナーデ」も歌ったアイドル歌手だ。と言っても、秋本はレダとこのイッキマンのタイアップでしかレコードを出していないため、アイドル歌手というにはどうなのかと思わなくもないが、歌唱力は「風とブーケのセレナーデ」の頃と比べるとちょっと上達が感じられるので、ぜひ合わせて聞いてみてほしい。
「ときめきセブンティーン」は、80年代当時流行っていたキラキラシンセを使用したアレンジに、密かに好きな男の子にあなたに決めてるからちょっと待っててねという歌詞が乗るベタベタなアイドルソングに仕上がっている。あまりにベタすぎて、これはアニメに合わせて作った歌というわけではなく、かといって秋本に合わせて作った曲でもなく、なんとなく宛がわれた曲ではないだろうか、そんな適当さを思わず感じてしまう。
そもそもこれを歌った当時、秋本は21歳だったようだが“セブンティーン”とはいったいどこから出てきたのか。星子も恐らく年齢非設定キャラである。適当はいかんよ、適当は。

07.御機嫌伺いLOVE
「パーマン」挿入歌

放送年 – 1986年
作詞・作曲 – 古田喜昭 / 編曲 – 高田弘
歌 – 増山江威子

古田ワールド炸裂のアイドルソング

説明不要の定番タイトルである藤子・F・不二雄原作のアニメ『パーマン』は2度アニメ化されている。今回は、1982年に放送された2作目の『パーマン』から、この作品のヒロインである星野スミレの持ち曲を紹介していこうと思う。
星野スミレは有名アイドル歌手であるが、その一方でパーマン3号(パー子)として多忙なスケジュールの合間を縫い、地球の平和のために活躍している。その正体はパーマン仲間であるミツ夫たちには秘密だ。
そして、スミレにはもうひとつ秘密がある。それは密かにミツ夫に恋心を抱いていることだ。
この「御機嫌伺いLOVE」はそんなスミレの内面を歌った曲……というにはスミレと曲の主人公の共通点がヒロインから相手を好きになったという点しかないため、アイドルらしい曲且つちょっとスミレっぽさも入れるというコンセプトで作られた曲なのではないだろうか。
作詞・作曲は『ときめきトゥナイト』『魔法の天使クリィミーマミ』の楽曲でお馴染みの古田喜昭だ。古田の曲はキャッチーでかわいい曲が多い。私も好きな曲が多いのだが、だがしかし、古田の女の子視点の歌詞はどうも偽者の女の子を感じて仕方がない。「ときめきトゥナイト」然り「デリケートに好きして」然り。決して嫌いではないのだが、この「御機嫌伺いLOVE」も例に漏れず、先に好きになった方が強く出れないという内容にどうにも共感ができないのは私だけだろうか。
歌はスミレの声を担当した増山江威子だ。まさかの増山江威子再び。「クールな恋」のときから考えるといくらか歌唱力が上がっているが、それでも不安定感は否めない。しかしこの不安定感、生涯そのままであってほしいと私は思う。

08.BIN♡KANルージュ
「魔法の天使クリィミーマミ」挿入歌

放送年 – 1986年
作詞 – 岩里祐穂 / 作曲 – 亀井登志夫 / 編曲 – 岩本正樹
歌 – 太田貴子

一万年と二千年前と2000年

『魔法の天使クリィミーマミ』は主人公・森沢優が魔法の力で変身し、マミというアイドルとして活動していくというストーリーであると同時に、新人アイドル歌手である太田貴子を主人公役の声優として起用しているため、劇中歌がたくさん存在する。マミの楽曲は全般的にとてもレベルが高く、私も好きな曲がたくさんあるのだが、今回は「デリケートに好きして」に続き、マミの2ndシングルとして劇中に登場した「BIN♡KANルージュ」を紹介していこうと思う。
「BIN♡KANルージュ」は挿入歌だが、太田貴子のシングル盤としても発売されている。挿入歌といえば手抜きを感じる曲も少なくないが、この曲はシングル盤として発売しても他の一般的なアイドルソングと遜色ない出来に仕上がっている。むしろ、そのフレッシュで垢抜けた楽曲は、当時たくさん存在していたB級アイドルたちの楽曲に比べて、1段レベルの高い楽曲に仕上がっているように思う。
「BIN♡KANルージュ」は曲のかわいさも去ることながら、歌詞がまたかわいい。アイドルらしいきらきらとしたワードが散りばめられており、太田貴子の初々しい歌声と実にマッチしている。作詞は後に坂本真綾をはじめとする著名な歌手やアニメの曲を書くことになる岩里祐穂“一万年と二千年前から愛してる”というフレーズで一斉を風靡した「創聖のアクエリオン」も彼女の手によるものなのだが、「BIN♡KANルージュ」でも“2000年愛せるの”という似たフレーズが出ているので驚きだ。もしやこの曲はアクエリオンへの布石だったのだろうか……。

09.青い風の日
「スーキャット」ED

放送年 – 1980年
作詞 – 伊藤アキラ / 作曲 – 井上忠也 / 編曲 – エジソン
歌 – 鶴岡弥生

絶望のスーを救った1曲

大人気アイドルサクセスアニメ『スーキャット』の楽曲と言えば、スーが歌う「んー・ジャンピングにゃん」がお馴染みだが、このエンディングテーマ「青い風の日」も劇中でヒットソングとして登場する曲だ。え、『スーキャット』を知らないって? 悪いことは言わないから早く本編を観た方がいい。
ネタバレとなるので詳細は割愛するが、「んー・ジャンピングにゃん」でスターへの道を登りはじめたものの、突然の悲劇により芸能界を干され、絶望の淵に立たされたスーを救う楽曲として登場するのがこの「青い風の日」である。すっかり「んー・ジャンピングにゃん」を忘れたスーは、姉妹であるミキとランと共に下町で「青い風の日」を流しで歌い、クチコミの力で芸能界へと返り咲く。そして、最終回、キャット紅白歌合戦の舞台にはスーとミキとランの姿が……。
ミキとランは棚ぼた感がすごいとか、星になった虎渕先生のこともっと思い出してやれよ(ネタバレしてしまった)とかいろいろ言いたいことのある最終回ではあったが、「青い風の日」は楽曲としてはとても魅力的な曲だと思う。
跳ねるようなベースはこの曲にわくわく感を与えているし、随所に入るきらきらとしたシンセの音もいいアクセントだ。そして、主人公・スーを演じた、歌手・鶴岡弥生の声がまたいい。レコード版は若干高音がフラット気味だが、一生懸命さが伝わる歌声が好感触だ。ちなみに『スーキャット』出演の翌年に芸能界を引退しているのだが、個人的にとても好きな歌声だったので売れることなく引退した事実は非常に残念である。

10.亜美のGuilty Night!
「くりいむレモン」IM

放送年 – 1980年
作詞 – 池田由縁 / 作曲・編曲 – 勝山俊一郎
歌 – 野々村亜美

お兄ちゃん、亜美はあの夜のことを忘れません…

ラストを飾るのはあの『くりいむレモン』からだ。『くりいむレモン』を知らない人はお父さんに聞いてみよう。
『くりいむレモン』の看板ヒロイン・野々村亜美が実はなんやかんやの経緯を経てアイドルデビューしているのをご存知だろうか。亜美名義で数曲レコードを売り出しているのだが、今回紹介したいのはそのうちの1曲『亜美のGuilty Night!』だ。イメージソングとして発売された曲なため、アイドル・亜美が歌った曲かと言われると微妙だが、亜美の曲の中で一番インパクトの強い曲なため今回はこちらを紹介したい。
この曲はGuilty Nightに相応しい怪しさ満点の1曲だ。“お兄ちゃん……。 亜美は、亜美は、 あの夜を忘れません”と、作中の出来事を思わせる亜美のセリフから入ってくるので、初っ端からムズムズ感マックス。そして、低予算感漂うバッキングに乗る亜美の不安定な歌がいろんな意味でたまらない。
曲の内容はひたすらお兄ちゃんとのあの夜のことなので、Aメロから怪しげな単語のオンパレードだ。Bメロでは、幼く無邪気だった頃を思い出し小休憩したかと思うと、サビでは“お兄ちゃん もう一度 恥ずかしさ 忘れさせて あの夜のように”と短いが強烈なフレーズがくるのだから恐ろしい。もうこの時点でお腹いっぱいだが、この曲のキモはやはりアウトロだ。なんとギターソロに乗せて、亜美の艶っぽい声が約30秒間も流れるのだ。そしてそのままフェードアウトしていくので、聞いたあとにはひたすら気まずさが胸に残る。
しかし私は知っている。聴き終えたあと、誰しもがついもう一度この曲を再生してしまうことを……。

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